木彫マリオネットの『コウモリちゃん』。
彫りが全て終了しました。
いよいよ着色に入ります。

まず、全体に薄く白を塗ります。

次は青。主に静脈が出るところに塗ります。

頭巾を赤に、長靴は黄色です。

唇も赤にします。

ここから微妙に変化していきます。
そして、だんだん生命感が出てきます。
肌に少し赤みを入れます。

ちょこっと黄色味をさします。

そして、分かりにくいですが、ゴールドを全体に塗ります。

眼球を白に。
頭巾と唇の赤も微妙に変化させていきます。

色彩に深みが欲しいので、さらに緑色を入れました。

黄色の長靴は、バナナを参考に着色していきます。

絵具で、メイクをしていきます。

さらにさらに、深いトーンになるように色々な事をしていきます。

強いコントラストと深い調子になりました。
迫力が出てきたようです。

唇には、細い線を何本も引きました。パッと見は分かりませんが、
こういう無駄な小技が、作品のテンションを高めてくれるんじゃないかなぁと思うわけです。

いままで白眼をむいていましたが、いよいよ瞳を描き入れます。
魂がのっかる瞬間のような気がして
いつも楽しみであり、緊張もします。

グリーンの瞳がよく似合っています。

さらに、さらに、執念深く、色々な事をします。
そして、ちょっとキザですが
作品の皮膚の下に血が流れて来たと感じられたら終わりにします。
なかなか良い色に塗れました。

次に、
刃物の彫り跡を目立たせる細工をします。
これで、もう一段上にいきます。

サインは右足の裏に『TAKAOKI』と。
芸のないサインですが、バカっぽくていいかなぁと思っています。

ところで、
コウモリちゃんを作る時に出た端材で、『アリ』をつくりました。
ですから、コウモリちゃんとは兄弟です。
タイトルは『アリちゃん』。

完成記念にパチリ。アリちゃんも嬉しそうです。

アリちゃんの方が先に完成していたので、兄貴になります。

コウモリちゃんの目玉にはガラスコートを。
唇にはラッカーを塗って光らせます。

これですべての工程が終了。
あとは組み立てです。

蜜蝋で磨いてから組んでいきます。

可動部分に棒を差し込みます。
メンテナンスのしやすさを考えて、手で抜き差し出来るようにしてあります。

首を装着し、腕を革ひもで結びます。

そして、足をつけて。
コウモリちゃんの誕生です。

僕が一番興奮する瞬間です。
こいつが木の塊だった頃から知ってますから感慨深いです。
そしてこの瞬間から、もう僕は飽きてしまい興味が無くなっていくようです。
もちろん、作品は愛していますが、確かにこんな心持になります。
なんか変な感じですが、
モノを作る人は、だいたいそんなもんではないでしょうか。
コントローラーを取りつけます。

椅子に座らせて、まっすぐ刺さっているか確かめます。
眼が合うので、知らず知らずのうちにニヤけてしまいます。

糸を張って、完成です。

彫刻が完成した時と、マリオネットが完成した時とは、なんだか気持が違います。

「ぐふふ。いいなぁ。」と、一人うぬぼれるのは一緒ですが、
マリオネットの場合は、なんかセンチメンタルになります。
動くからでしょうか。
しばらくご覧ください。





コウモリちゃんは夜型なはずですから、目を充血させて正解でした。
寝不足気味の表情がとても合ってます。




アトリエに立たせて、二人っきりになると妙な話ですがちょっと怖いです。
毎度ながら、こっちに歩いてきたらどうしようと思ってしまうのです。

僕のこういう妄想癖は幼いころからで、例えば紙相撲なんかはかなり本格的で自作の力士の数は五百をこえ、
それこそ幕下から横綱までいて、各々がちゃんと四股名を持ちそれぞれ部屋に属しており、年六場所を戦い
成績に応じて番付が上下し、引退の時は断髪式をおこない、そのあとは背広を着て部屋の親方になる。
これを一人ですべて取り仕切って遊んでいたのですから、尋常ではありません。

大きさはこれ位。
マリオネットとしては、アホみたいなデカさだと思います。






角度によって、怒って見えたり泣いて見えたり笑って見えたりするように
ちょこっと工夫してますが、どうでしょう?

次に、恒例
ちくわ一門との記念撮影です。

とりあえず、入門したてのアリちゃんと記念撮影です。

ちくわにまたがるヤンチャ者です。
さやいもむし君のさやも横取りです。

伝説の名工、千代鶴是秀ちゃん、砥石くんとは
さすがに礼儀正しく…

…でもないみたいです。





ちくわ一門の総領弟子、スターのいもむしくんとはさすがに礼儀正しく。

…でもないです。

弟のコウモリちゃんと記念撮影。



ちくわ一門総出です。


このくだりになると、いつもマリオネットが泣いているように見えるから不思議です。


雪だるまちゃんの上に座らせてもらいました。


物凄い嫌な顔に見えます。思わず笑ってしまいました。

可愛そうなので、そろそろ止めてあげます。

雪だるまちゃんは馬鹿なのか、嫌がってません。

というわけで、新しいマリオネット。『コウモリちゃん』です。
一門ともども、よろしくお願い致します!


話は変わって、展覧会のお知らせです。
4月24日(火曜日)から4月30日(月曜日)まで、千葉県立美術館で僕の作品が展示されます。

僕はこの木彫女性像を出品します。
4月28日(土曜日)には「作家によるギャラリートーク」も開催され、僕も喋ります。
僕は例年緊張のため、非常にためにならない話をボソボソと話します。
ですから短気な人は要注意です。
不味さに対する怒りを、安さで何とか治めるという
立ち食いのうらさびしい味わいが好きな方は来てください。
ゾクゾクするはずです。

続いて、コチラ。

5月3日(木曜日)東京の池袋のライブハウス、『鈴ん小屋』で
コウモリちゃんが踊ります。
僕自身が操ります。ほんの少しの出演です。
僕はたぶん、緊張のため全く生気の無い操りをし、
他の出演者並びに関係者各位に期待外れと罵倒され、千葉に帰って行きます。
その一部始終をご覧になりたい方、うらさびしい立ち食いの味わいが好きな方、来てください。
(僕以外の出演者は素晴らしい芸を披露しますので安心してください。)

そして、4年ぶりとなる個展をやります。
場所は、取手市の小文間(オモンマ)
Gallery&Cafe OMONMA TENT(オモンマテント) → http://trap.main.jp/tent/
(オモンマテントで検索してみてください。)
5月11日から6月3日の金土日のみオープンです。(11時から18時まで)

出来たてのコウモリちゃん他、色々な作品をどっさりもっていきます。
門外不出の『ちくわ一門』も展示します。
作品販売もあります。
僕も極力、在廊します。
こちらは、立ち食いのうらさびしい味わいがお嫌いな方も大丈夫なはずです。
どうぞ、よろしくお願い致します。

そんなこんなで、また話はかわります。
先日、
妻がスマートフォンのケースが欲しいと騒ぎ出しました。
「あんた、ちょくちょく都内行くんやから、これで買ってきて。」
と、一万円くれました。
「あんな、頑丈なのがええよ。頑丈なの。」
僕は一万円を握りしめ、しばらく考えました。
頑丈なの
↓
僕が木で頑丈に作る
↓
買ってきたよと言う
↓
賞金一万円
天才だと思いました。

クスノキで一心不乱に彫りました。
賞金一万円ですから。

かなり分厚いですから、すごい頑丈です。落としても絶対割れません。
ヘンリームーアの抽象彫刻のような感じを狙いました。

裏面には、節の跡が出ました。

これは、なかなか無いでしょう。

まさに木彫です。一万円の賞金では安すぎる出来です。
しかし敵を欺くには、これくらいやらないといけません。

敵(妻)のこんな話があります。
以前、我が家にかなりご高齢のお客さんが来た時の話です。
お帰りになりそうなので、僕は妻にタクシーを呼んでおいてと頼みました。
タクシーが来て、妻が「お迎えが参りました。」とお客さんに言いました。
こういう人です。
絶対にわからないでしょう。
僕は、ちょっぴりドキドキしながら、しかし堂々と言いました。
「買ってきたよ。」
「誰があんた作れ言うた。」
一万円は取り上げられました。
妻によると、
僕のお小遣いは、二百五十歳までの分をすでに前借りしているそうです。
僕は、腐ったハマグリみたいにパカッと口をあけて聞いていましたが、
こうも続けました。
今回の件は非常にたちが悪く、見過ごすわけにはいかないそうで、
二百五十歳を、二兆歳まで押し上げると言いました。
しかも、ずるい事に木彫ケースは使っています。
三兆歳まで押し上げられるのではないかと苦情も言えません。
僕は、またコツコツと彫刻を作って二兆歳からせいぜい百七十歳位までにしないといけません。
ですから、どうか、コウモリちゃんを買ってください。

コウモリちゃんが売れたら、木彫ケースと一万円を取り上げた妻に威張るのです。
どうか、よろしくお願い致します。
最後に、コウモリちゃんの踊る姿をご覧ください。
今日も来てくれてありがとうございました。
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- 2012/04/11(水) 19:00:00|
- マリオネット
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| トラックバック:0
-
| コメント:5
堪能です!!
つっこみたくなるところ多々あり></(笑)
こうもりちゃんの竿をさやで隠すとこも、ゆきだるまちゃんが、下のボールに見えたりもwww
あ、下のことばかり。。。。(笑)
今度も、本当に素晴らしいです~~!!
奥様も健在で、惚れ惚れですwww
こうもりちゃんも、個展やイベントへ参加するまではいつものお店へ奉公に出すのですか??
- 2012/04/11(水) 23:51:09 |
- URL |
- みさ #x6YPk.I.
- [ 編集 ]
ミサさん、コメントありがとうございます!
> こうもりちゃんの竿をさやで隠すとこも、ゆきだるまちゃんが、下のボールに見えたりもwww
このダブルイメージに気付くとは…。さすがとんちが利いてます!嬉しいですよ!
> こうもりちゃんも、個展やイベントへ参加するまではいつものお店へ奉公に出すのですか??
6月3日に個展が終わるので、それ以降にパペットハウスさんに奉公に出しますよ。
出張などが重なったら会いにきてくださいまし。
- 2012/04/12(木) 06:11:46 |
- URL |
- シド工 (しどこう) #-
- [ 編集 ]
ユミさん、コメントありがとうございます!!
> 楽しい とにかく 楽しくなる作品ばかり、、、、物語がありますね~命を吹き込まれた子達を見守る姿が 文章から読み取れます。
80歳くらいの老彫刻家になって
「~ちゃん」とか「~くん」というタイトルの作品を作るんじゃないかと心配されています。(笑)
>そして一万円のカバーを せっせと作る様を想像すると 笑っちゃいました。…あのカバーいいですね~…結局カバーを使っているフフフッ…いい奥様ですね~また 楽しみにしています。
今は蝶つがいをつけて画面のフタを装着しています。
ますます訳のわからないカバーになってますよ。
- 2012/05/17(木) 06:36:46 |
- URL |
- シド工 (しどこう) #-
- [ 編集 ]