「これはいったいどうゆうことや。」

と、この紙切れを前にして妻は尋問してきます。
うっかり隠すのを忘れて、ほっぽらかしていた僕のデッサンです。
妻はこれを見て、すぐにピンときたそうです。
こいつ雪だるまを彫る気だな、と。
「頼むから売れるモノをこしらえておくれ。」
と、言われましたが
もう作ってしまったので、ハイハイと、いつもより素直に説教を聞けました。

『雪だるまちゃん』です。

おもいっきり馬鹿馬鹿しいモノを、無性に作りたくなる時があります。

ここのところ忙しかったので、脳みそが『馬鹿』を欲していたのではないでしょうか。

けっこう大きくて、20センチ位あります。

雪だるまを作って、だいぶ僕は満足しましたが…。
まだ、もう一つのデッサンを立体化していないのです。
「雪だるまのデッサン」というインパクトに、隣の四角いデッサンを、妻は見過ごしました。
僕は、下を向きながら説教を聞き、その実、舌を出していたわけです。
このくらいでなければ彫刻家なんて、つとまりません。

四角いデッサンの話は、また後で。
そんなこんなで。
去年の暮。
『彫刻家が作った道具展』に来て下さった皆様、誠にありがとうございました。
木彫マリオネットの『いもむし君の神様』を馬にのせて展示しました。

馬は以前作った別の作品ですが、ちょうどピッタリでよかったと思います。

小品の木彫も、販売しました。
『魚乗り童子』です。

『龍くん』です。

『火星人とUFO』です。

『こうもりちゃん』です。

来られなかった方、展示の様子を動画でどうぞ。
木彫マリオネットの『いもむし君の神様』は、現在
東京の飯田橋にある
パペットハウスさんで展示販売中です。

このように、他にも色々な劇人形がある素敵なお店です。

お近くにお越しの際は是非のぞいて見てください。
神様のアウトテイクです。
そして、また次の木彫マリオネットを作り始めました。

今回も、出たとこ勝負の行き当たりばったりで彫って行くので、
どんなモノが出来るかわかりませんが、よちよちやっていきます。

いつもはクスノキを使っていますが、今回は「桂」の木を使いました。
赤桂という品種で、高級品です。
大きさはこれ位。

クラシックギターと同じ位です。
調子に乗ってまたデカイのをやってしまいました。
大きいのは時間もかかるし、大変だけど作っていて楽しいのです。
どんなのが生まれるか、ワクワクします。
ちょこっと前ですが、こんなのも彫りました。

「コウノトリと赤ちゃん」というお題で、ご注文して頂いたものです。

手のひらサイズのモノです。

お題だけ出してもらって、後はお任せの仕事だったのですが、ありがたいことです。
楽しくって、この赤ちゃんみたいな顔になってしまいました。

ちくわ一門と記念撮影。

うちの、ちくわ一門の高弟に『さやいもむし君』がおりますが、
その『さやいもむし君』を頼まれたので、新たに作りました。
まず、「さや」をざっくりデッサンします。

中に入る「いもむし君」を旋盤で荒彫りします。↓
荒彫りがすんだ「いもむし君」とザックリデッサンの「さや」

「さや」を万力で挟んで、穴を彫っていきます。

「いもむし君」が入るかどうかチェックします。

入りました。

万力から外して、「さや」の形を鋸で切り取ります。

「さや」の形を整えていきます。

「いもむし君」の触角も彫っていきます。

細部までしっかりと。

「さや」も丁寧に仕上げていきます。

このくらいでいいでしょう。

「いもむし君」の顔を彫って完成です。これから着色工程に入ります。

『さやいもむし君』の後ろに見えるのはこれです。
まだ未完成ですが、『びっくりする猫』です。

さらに、同時に、色々な作品を制作中です。
『木彫ネクタイ』です。

ネクタイをもっていないんで彫りました。
先ほどの『コウモリちゃん』も注文頂いたので、作り始めています。
ザックリとデッサンして、バンドソーで切っていきます。

切れました。

さらにいらない所を落としていきます。

落ちました。

新しい『コウモリちゃん』はちょびっと前のと違いますが、なんだか良くなる予感がします。
それから、鳥の「ハシビロコウ」をまた彫ってみます。(写真左)
今度は、ちょっと可愛くしてみようかと思います。

それから、「オートマタ」なるものを作ってみようと思って仮組みしました。

こんなふうに動きます。
あまりの馬鹿馬鹿しい動きなので、クラクラするほど脳が喜んでいます。
ここから全て、彫り込んで行って最終的には『みたらし団子ちゃん』が動くという
アホオートマタにして、女房を泣かせていきます。
それから、
お雛様。荒彫りの状態です。ご注文品。

以前作った『お雛様』をご予算に応じて、サイズを小さくしました。手乗りお雛様です。
そして、
ニューコウモリちゃん。

プラス、
さやいもむし君。

お雛様の形を整えていきます。

ひたすら彫刻刀を動かして…。
だいたい彫り終えました。

眼の入る場所に穴をあけて、次は着色です。

『さやいもむし君』の着色も一緒にやります。
全体に、薄く白を塗ります。

明るい緑を塗ります。

濃い緑で変化をつけて、屏風に黒、頭にも黒を塗ります。

さやいもむし君には黄色を薄くぬります。だいぶ深みと立体感が出てきました。

お雛様の下に青と赤を塗ります。屏風とさやいもむし君にさらに変化をつけていきます。

屏風に金を塗ります。

座布団の模様を描いて、着色が終了。あとは眼を入れて完成です。

お雛様です。

なんだか分からないですが、ちゃんとお雛様になっています。

「いやー、ひまね。」

「わ~!」

「あれ?」

「いたいいたいいたい!」

「わ~!」

「わ~!」


「帰ろう。」
「やっぱりここがいいわ。」

「わ~!」

「ちょっとなにすんの。」

「いや、ほんと、ちょっとなにすんの。」

「ほっといてよ。」

「ほんと、ほっといてよ。」
『さやいもむし君』も完成しました。

さやカヌーです。


今回もいい表情に彫れました。


めずらしくサインを入れました。

この『さやいもむし君』は海外に旅立つことになります。

さやカヌーで気をつけて行ってらっしゃい。
話は変わりまして…。
先日、こんな本を読みました。

ざっくり言うと、砥石(といし)の本です。
刃物を研ぐ時に使う、砥石(といし)です。
中身はと言うとご覧の通り、砥石の写真ばかりという
変態書籍です。

僕はこの本を、電車の中で目を血眼にして夢中で読みました。
それほど面白い本でした。
吊革につかまってる僕の前の人は、石の写真を見る気持ち悪い人と思ったかも知れません。
しかし、そんなことなんてかまっていられないほど、勉強になる本でした。
普段、何気なく使っていた砥石とは、こんなにも美しいモノなのかと思いました。
そして、刃物同様、深いのです。
僕は、砥石のもつ強い造型と、凛とした美しさを、
木で出してみたくてたまらなくなりました。
僕はすぐさま、砥石を彫るための木端をさがしました。
この木がちょうどいいようです。下はモデルの砥石。

木端は少し大きいので、モデルの砥石を重ねて、鉛筆でなぞります。

出来ました。僕はこの方法を思いついた時、天才だと思いました。

鉛筆の線の通りに鋸で切っていきます。

出来ちゃった。

と、若い時の自分は、ここで思ったでしょう。
しかし、今ならはっきり言えます。
「まだ出来ていない。」 と。
次に、彫って行くわけですが、
ここからの作業が困難を極めました。
「もう、出来てるやん?」
と、言う『甘え』との闘いです。
木端の山に、うっかり置いて見失いかけたりもしましたが…、

僕は『とうふちゃん』を彫りあげた男です。
砥石も、なんとか納得できるレベルまでこぎつけました。

絶対に、ギャグでは終わらせない。砥石の持つ美しさを必ずモノにしてやる!と意気込んで作りました。
ですが、やっぱり顔をつけました。
『砥石くん』です。


四角いデッサンは『砥石くん』だったのです。


雪だるまよりも、作っていて気持ちよかったです。

若干、平面精度が悪い、お茶目な『砥石くん』です。

砥石とくれば、当然、刃物です。
『砥石くん』の相棒に、『千代鶴是秀ちゃん』(ちよづるこれひで)も作りました。

千代鶴是秀(ちよづるこれひで)とは、伝説の鍛冶、名工中の名工と言われる、打刃物職人です。
詳しくは、
千代鶴について書いた僕のブログ記事をご覧ください→
千代鶴是秀一木で彫り出しています。

千代鶴是秀をモデルに、千代鶴是秀を使って、千代鶴是秀を作っているところです。

細部は、これまた名工の清忠(きよただ)を使って彫ります。

こういう道具を、たまたま使えている僕は、本当に幸せものです。
冠(かつら)の部分の着色は上手くいきました。

祖父、から父、そして僕と使ってきた道具の凄みがちょっと出せたと思います。
『千代鶴是秀ちゃん』にヒゲが生えているようですが、これは千代鶴是秀の『銘』です。梵字です。

冠(かつら)をはめ込んだ時に出来た、柄のヒビもリアルに再現しました。

『千代鶴是秀ちゃん』と『砥石くん』は切っても切れない縁で結ばれています。

刃物をモチーフにして彫刻するなんて初めてでした。

普段見慣れている鑿も、彫刻的な眼で見ると、随分ちがって見えました。

本当に、道具のフォルムは美しいと思いました。

特に、首から穂の部分の造型(千代鶴是秀ちゃんの首の部分)に感じ入ってしまいました。

鉄を熱くして、叩いて、こんな綺麗なモノを作るなんてすごいなぁと思いました。

本物の千代鶴是秀と記念撮影。

雪だるま、砥石、鑿と作って、すっかり僕の脳は、「馬鹿」で満たされました。

また今年も頑張れそうです。
出来たてのみんなで記念撮影。


このグループもなかなか良い一門です。

お転婆者のお雛様もいい味だしています。


いもむし君の奇行も相変わらず。
僕の、「二大作るの大変だった」コンビです。とうふちゃんと砥石くん。

雪だるまちゃんも気に入っています。

千代鶴是秀ちゃんにも加わって頂いて。

さやいもむし君と今回作ったさやいもむし君です。

おてんばお雛様。

コショウのビンちゃんも。

そうめんとオタマジャクシくんが入って。

最後にちくわが入って一門そろい踏み。

新入りの千代鶴是秀ちゃんにちくわ自ら近寄り、記念撮影。

同じく、新弟子、雪だるまちゃん、砥石くんと。

そんなこんなで、今年初のシド工日記でした。
皆さま、もう1月も後半です。
完全に新年明けきりました。
このあたりで、
おめでとうございますと言っていいでしょう。
いつも読んで下さる方々、ありがとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

今日も来てくれてありがとうございました。
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- 2012/01/24(火) 15:25:10|
- 彫刻作品
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