最近、妻に隠れてコソコソ作る絶対に売れない作品より、
堂々と作っていられるモノが続いたので、
なんかだか調子が狂います。
自宅で万引きしている様なもので、スリルがありません。
そんな時、
ふと、アトリエに転がっている木端に目がとまりました。
それがテーブルコショウに見えてしまい、
僕はコショウのビンの美しさを
木で出して見たくてたまりなくなり、
それから鑿を研ぎ、小刀を研ぐのに二三日かかって
脇目も振らずに彫り始めて七日目にやっと彫りあげました。

これは完成まで、見つからずにすみました。
物凄く馬鹿馬鹿しいモノなので、たっぷりスリルを味わうことが出来たのです。
いわゆる、『身の危険で感じる』というわけです
名前を、コショウくんか、ビンちゃんにするか悩んでいたので、妻に相談してみました。
「コショウくんか、ビンちゃん、どっちがいいだろうか?」
このような、どうでもいい悩みを打ち明けてしまったのがいけなかったのでしょうか。
少し不機嫌になったようにみえます。
もしかしたら、
僕は、妻をしくじってしまったのかもしれません。
でも、妻はそんな事で
僕を責める様な、心の狭い人ではありません。
自分に甘く、夫に厳しい女性が多いものですが、
妻は自分に厳しいタイプです。
「どうして結婚したのか。」
「しつけが甘かった。」
「もっと叱っとくべきだった。」
などと、
自分を責めますから、
僕は気分的に随分と楽です。
結局、名前は
『コショウのビンちゃん』。
ひとりで決めました。
もう一つ、
『コショウのビンちゃん』と
一緒にコソコソ隠れて作っていた作品があります。

『さやいもむしくん』です。
余談ですが、
コソコソ隠れて作ったり、
僕は随分と妻を恐れているように聞こえますが、
そんなことは全然ありません。

なんの理由も無く危害を加えることはしないので、
僕は安心しています。

ただ、危害を加える理由が
僕に分かることが、
滅多にないのが残念です。



それから、
木彫の等身大の女性像が、仕上がりましたので
しばらく、ご覧下さい。↓

モデルは居ません。

13個の木をくっつけて、こしらえました。

ごく、薄く着色してあります。

1年位かかってしまいました。

よちよちよちよち、制作してやっと出来たのですが、

やっぱり、僕はガッカリしてしまいます。

こんなはずじゃなかった。なんて思います。

悔しいので、また違うの作ろうと思います。

しかし、ほんの少しですが
美しくできたかな?なんて自惚れます。
大正期を代表する彫刻家の一人、中原 悌二郎の妻の手記に、このような一節があります。
『中原は独り言のように「二か月もかかって作ったものが今度も誰もこんなもの顧みる者もなかろう。」と
憮然として申しました。 私は彫刻の事など、本当のところ分かっていないのですけど、小品ながら豊かに
深みのあるような美しいこの全身像を本当に見てくれる人も居ないとしたら、随分気の毒だと思いまし
て…。「こんなにいいのに、こんなにいいのに。」とつぶやいて居りました。』
僕は、この何とも美しい一節が大好きです。分かりすぎて涙ぐんでしまいます。
これはもう、我が家でもやるしかありません。
妻が、アトリエに来たところを見計らって、

「一年もかけて作ったものが、今度も誰も顧みる者もなかろう。」

「こんなにいいのに、こんなにいいのに…。」

御察しの通り、中原悌二郎の妻のようにはいきませんでした。

ここから、怒涛の駄目だしがはじまりました。
どんな事を言われたかは、涙があふれてくるので書けません。

駄目な所は作者が一番わかっています。

それを面と向かって言われると、随分精神の修行になります。

いわゆる、落語界でいうところの『蹴られる稽古』です。

しかし、
彫刻家になってから『蹴られる稽古』ばっかりしている僕ですから、余裕です。

「近所の人達がそう言ってたよ!あそこの彫刻家はハナクソ彫刻家だって。」
と、僕が一番気にしていることを平気で言う妻の言葉にさえ
負けずに、少し自惚れます。



荒彫りの段階がこうです。写真を参考にします。↓

で、こうなりました。


不思議かもしれませんが、やってることは凄く原始的です。
ただ、木を鑿で彫っていくだけなのです。




なぜ人体を、しかも裸を作るかというと、

「楽しい」からです。

本当は、色々、御託を並べた方がお客様も安心するのでしょうが、

頭が悪いのでそれが出来ません。

こういうことを言うのは野暮ですが、
めずらしく、ちょっと言ってみました。







こういうシリアスなゲージュツ作品と『コショウのビンちゃん』を作る脳は一緒です。

なにか、スイッチがあって切り替えてやっている訳ではないのです。

このふり幅の大きさに、ウソ臭さを感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、
僕は正直にやっています。

どちらも、僕自身なんだと最近は開き直っています。



そろそろ、明るくしましょう。 ゲージュツは陰気になっていけません。

『さやいもむしくん』と『コショウのビンちゃん』が、
新たに加わった『ちくわ一家』の集合写真です。↓

ますます、ナンダカワカラナイ集まりになってきました。

作ろうと思っても絶対つくれない組み合わせです。


計算してませんでしたが、ちくわがスッポリ入りました。

みんな、とっても、仲がよさそうです。

これからまた、どんな仲間が増えて行くのか僕も楽しみになってきます。

『コショウのビンちゃん』の微笑みは少しシニカルです。

自分の地味さを良く分かっている皮肉屋という設定です。

やはり、ちくわは威厳があります。

僕が、「裸で電球一つのアパートに住んでいた時」に、散々ちくわを食べたので、
思い入れがちがいます。

妻の評価はどうなのかと言うと、それほど喜んでくれませんでした。

コショウくんにするか、ビンちゃんにするかの質問が、
妻に絶望感を与えたのかもしれません。

気持ちは良くわかります。
僕だったらハリ倒します。

あげくのはてには、「こんなにいいのに、こんなにいいのに。」
と、
チラチラ横目で見ながら、つぶやいているのです。
随分、妻をイライラさせてしまってる気がします。

僕の幼稚園の時の卒業アルバムに、
「おおきくなったら、ちょうこくかになりたい」
と、書いてあります。
妻の気持ちは、
たぶん、こうです。
「大きくなったら、彫刻家に慣れたい。」
今日も来てくれてありがとうございます。
スポンサーサイト
- 2011/07/25(月) 16:51:45|
- 彫刻作品
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
涙あり笑いありの、楽しいブログありがとございます^^
さやいもむしくんの、サヤに竹輪が入ればおもしろいのに~・・・と思った矢先に
さすが、田島さん!入れましたね(笑)
その写真見て、竹輪が収まってるあの面白さがなんともいえないですね~~
笑いの期待も裏切らないとこ、さすが!素敵ですよ~^^b
- 2011/07/26(火) 21:50:13 |
- URL |
- 渋谷みさ #x6YPk.I.
- [ 編集 ]
ミサ様
いつも、コメントありがとうございます!
> 涙あり笑いありの、楽しいブログありがとございます^^
僕は、涙あり笑いありの、「一人松竹新喜劇」であり、「一人電通」でもあります。(笑)
> さやいもむしくんの、サヤに竹輪が入ればおもしろいのに~・・・と思った矢先に
> さすが、田島さん!入れましたね(笑)
> その写真見て、竹輪が収まってるあの面白さがなんともいえないですね~~
偶然、すっぽりと収まりました。意識しないでも自分の好きな大きさになるんですね。
どれでも、作る「手」は一緒ですから。
> 笑いの期待も裏切らないとこ、さすが!素敵ですよ~^^b
ありがとうございます!ちょっとクスグリ入れすぎたかなぁ?と思っていたんですが、
受けを頂いたみたいで、良かったです!
- 2011/07/27(水) 08:37:52 |
- URL |
- シド工 #-
- [ 編集 ]