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シド工日記 (しどこうにっき)

仏師の流れをくむ彫刻一家にたまたま生まれ、私自身は5代目の彫刻家です。田島享央己(たじま たかおき)と申します。美術界の「フチ」にかろうじて手をかけている者ですので、どうかご存知のない方はこれを機会に覚えていただけると嬉しいです。

リトグラフ作品について


 リトグラフをやる事になった。












初めてで

全くわからないので書物を読んだり

ネットで技法を調べまくった。













その中に、












『 リトグラフはヨーロッパの技法であるからヨーロッパの水を使うべし 』






と、いう様な記述をネットで見つけた。






そこの文字列だけ鈍く光っている様に感じた。








行き詰っていた思考に一閃の光が差し込み、打ち上げ花火の様にアイデアが湧き上がった。






すぐに通販サイトでフランスの超硬水でお馴染み、コントレックスを大量に買った。








NYに行った時、ガイドの人が

「NYのベーグルは美味しいでしょ?秘密は水なんです。日本の水ではこの味にはならんのですよ。」



と、言っていたのを思い出した。



















リトグラフ用の墨をコントレックスで丁寧に丁寧に磨っていると

黒と白の美しい模様が両目で見ているかのように心の中に浮かび上がり、

ワクワクを抑えても抑えても微笑がこみ上げてくる。













磨り上がった墨を見ると、高貴で端正で匂うように美しい黒。



「さすが硬水で磨った墨。佇まいが違う!」






と、感嘆の吐息を洩らした。





















筆を取り、一人の作業に深く集中する。








自分の感覚がどんどん研ぎ澄まされて、子供に近くなってくるのがわかる。








洗濯物のポケットの中から、てんとう虫の死骸とビスコが出てくるくらいピュアになってくる。













気がつくと、空が白んでいた。
















そんな制作が2週間程続き、8点連作が完成した。














あとは摺師の尾崎正志さんに託せば大丈夫。

















完成したので軽い打ち上げ。

家族と焼肉を食べに行った。







お会計時、ガマ口を開けたら25円と塩豆が7つ出て来た。






横にいる妻と娘が何とも言いようの無い侮辱をこめた目で見てきた。






完成して晴れ晴れとした気持ちだったのだが、

店員さんが笑いそうになるのを口の中を奥歯で嚙むようにし堪えているのがマスク越しにも分かり非常に苦い憂愁を感じた。










そんなこんなで

リトグラフが終わったので次の仕事にかかる。

気分よく鑿と玄能で木を彫った。













摺師の尾崎正志さんから電話がかかってきた。























描画が流れて消えてしまった。





























理由は硬水で墨を解いたから。











フランスでは解き墨の水は沸騰させてから使うそうだ。




















日本の水道水が1番良いのに、したり顔で工夫し、わざわざフランスの超硬水を取り寄せてしまったのだ。














摺師の尾崎正志さんは

「こんなの初めてです。あなたの探究心には感心しました!」

と、笑いながら慰めてくれた。

さらに、必ず水道水と言わなかった私も悪いと仰ってくださった。















10割私の『工夫』のせいなので、尾崎さんの優しい言葉に胸の奥底が熱く泡立った。





































消えてしまった幻の原画(アルミ板にコントレックスで解いた墨)↓
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「勝手にトップロープに登って、1人で落ちて痛がっているプロレスラーのようね。」


と、妻も慰めてくれた。




















消えてしまった幻の原画(アルミ板にコントレックスで解いた墨)↓
IMG_0843.jpg















その後、数日は

魂が血管を下り、足の裏を突き抜けて地面にめり込むように落ち込んだ。
















消えてしまった幻の原画(アルミ板にコントレックスで解いた墨)↓
IMG_0841.jpg























保育園に娘を送り届けなければならないのに

私1人で保育園に行ってしまったくらいに動揺していた。





































消えてしまった幻の原画(アルミ板にコントレックスで解いた墨)↓
IMG_0839.jpg













『 新作リトグラフシリーズ発表 』 と既に謳ってしまっているので

1日で描かないと展覧会に間に合わない。


















消えてしまった幻の原画(アルミ板にコントレックスで解いた墨)↓
IMG_0840.jpg






















横浜の尾崎正志版画工房に向かった。

また変な工夫をするといけないのでギャラリー担当者と尾崎さんが眼を光らせている。




















消えてしまった幻の原画(アルミ板にコントレックスで解いた墨)↓
IMG_0837.jpg


















色々なプレッシャーがかかり

とてもじゃないが描けないと思ったけれど1日で楽しく描けてしまった。



















消えてしまった幻の原画(アルミ板にコントレックスで解いた墨)↓
IMG_0838.jpg























家にコントレックスが大量にあるので毎日ガブガブ飲んでいる。





心なしかお通じが良くなっているようだ。





痩せるかもしれない。
























消えてしまった幻の原画(アルミ板にコントレックスで解いた墨)↓
IMG_0836.jpg























そんな絵です。


LIFEシリーズをよろしくお願いいたします。



























そんなこんなで完成した最初の刷り。尾崎正志版画工房の床に置いて撮影↓
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これは日本の水道水で解いた正しい墨↓
IMG_3229.jpg






























リトグラフを 『 レイエ 』 します↓





こちらは『無事故無違反』ですんなり完成したリトグラフ『スカートを穿く猫』の制作風景です↓





今回制作した 『 LIFEシリーズ 』 と、『スカートを穿く猫』 を展示した個展の様子です↓













リトグラフは限定部数があるので売り切れたら所蔵できるチャンスはもう2度と無いのです。

『 レイエ 』 しましたので、もう2度と増版されることはありません。



生意気なことを言うようですが、

世の有名作家達の初期の版画が高騰するのをご存じですか。





私も必ずそうなる!とは言えませんが、絶対にそうならない!とも言い切れないのです。


何が起こるかわかりません。



10年前の私を知っている方は、まさか売れるとは思っていなかったはずです。

ソ連に居た時のウォーズマンの様な格好で、真っ暗な画面のスマホを凝視していたのですから当然ですが

人生何が起こるか分からないものです。



当たるも八卦当たらぬも八卦。





ピンときたら貴方にとって運命であると考えるべきです。

買ってしまった後悔は時が癒してくれますが、

見送った後悔は永遠に癒されることは無いのです。



















どうせ一度切りの人生。

芸術作品に大金をつぎ込む蛮行をやってみてください。







































その日から常に作品は貴方のそばに居て貴方の心を一生ホカホカにしてくれるのです。





































在庫が少なくなってきたようです。

リトグラフ作品についてのお問い合わせは  gallery UG  まで。

































大量にあったボトルの在庫も残2となりました↓
IMG_3228.jpg


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  1. 2022/11/20(日) 13:50:32|
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