タイトルは 『 Left alone』

木彫(クスノキ)の等身大です。

モデルなしで彫りました。

作品タイトルの 『Left alone』 は、ジャズのスタンダードから。
"取り残され一人きり"
"独りぼっちになる"
"放っておかれる"
などの意味です。

乃木坂駅よりトホで3分、トホホで5分でお馴染みの国立新美術館にて、
開催される新制作展に展示されます。

私のような在野でインディーズの売れない在宅彫刻家の事なんて
美術界に詳しいと自負する人達のなかでも
「キイタコトガナイ、ダレダソレ、バカカ。」
と、いう人ばかりだと思いますが、
美術界の「フチ」にかろうじて手をかけている者ですので、
どうかご存知のない方は、これを機会に覚えていただけると嬉しいです。
ご高覧くださいまし。

よろしくお願い致します。
■
第79回新制作展■
国立新美術館 東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札6番出口 (美術館直結)
都営大江戸線 六本木駅 7番出口からトホで4分、トホホで6分
東京メトロ日比谷線 六本木駅 4A番出口からトホで5分、トホホで7分
■9月16日〜 9月28日
10:00~18:00
入場17:30まで
■金曜土曜夜間開館 20:00終了
(入場19:30まで)
■最終日9/28(月)
14:00終了 (入場13:00まで)
■会期中無休
■一般800円 学生・65歳以上無料

制作工程を少し。
まず、小さいモノを粘土で作ります。

そして、実際の大きさで作ってみます。 発泡スチロールを包丁で彫っていきます。

大まかに切った幾つかの材を組んでいきます。

さっと、粗彫り。

だいぶ形が出て来ました。

この辺りまで、ほぼ数種類のチェーンソーとグラインダー、ヤスリだけで彫っています。

今回、カービング専用チェーンソーのすごくいいやつを
「仕事の効率化のためだから仕事の効率化のためだから」
と、いうお題目を唱えながら購入。
アトリエにチェーンソー7台目。どんどん狭くなって効率悪い。

そして、
見つけ次第
「もう二度とないからもう二度とないから」 のお題目を唱えながら買うでお馴染みの往年の名機
『新ダイワペッカーA-400』 三機目入手。

デッドストックのモノを二束三文で手に入れたので
「これは鑑賞用だよね」
と、キャッキャッしながら並べて写真撮影。
妻、薄ら笑いを浮かべながら下賤な物を見るかのような冷やかな目線。
嘲りの対象として見る時のあのなんとも言えない顔をしていたので、
ハトのように平和でお馴染みの私も流石にカチンときてしまい
「パワーポイントの事を力仕事だと思っていたクセになんだ!」
と、言ったのを皮切りに内部抗争へと発展。
どこに出しても恥ずかしくない恥ずかしい話。
髪型をショートカットから、材を接いでアップスタイルに変更しました。

ここまでは、割とすぐ出来ちゃいます。
ここから先が「茨の道」。
アアデモナイコウデモナイと、ノイローゼ寸前まで仕事をしていきます。
それが結構楽しいんですが。

少し細かく彫ります。

鑿や彫刻刀などの手道具を使って、さらに細部を彫っていきます。
形を見えやすくするために白く塗りながら。

手道具は、だいたいこの位使います。

初代から当代までの代々の小信、宗意、ハイス鋼の道刃物工業、
光雲、無銘の安物、清忠、千代鶴是秀、
骨董市やリサイクルショップで二束三文で購入した古いモノ、等々。
祖父の代から使っているモノは、チビてしまっています。
ですが、全て使いやすいです。
制作途中で、こんな道具も手に入れて使いました。

玄翁です。
高価です。 柄をすげて鑿のお尻を叩くものです。
鑿のお尻をひっ叩くだけのモノですが、出来の良い抽象彫刻が霞んで見える位、パリッとした美しさがあります。
「トンカチの頭だけでそんな値段するのかい⁉︎」
と、岩で出来た平家蟹の様な顔で恫喝してきた妻に、
「彫刻家朝倉文夫愛用千代鶴是秀作木彫用ダルマ玄翁長運写し相田浩樹作八十匁三軒茶屋土田刃物店購入!」
と、寿限無のように唱えたら腐ったハマグリの様にパカッと口をあけて黙ってくれました。
効き目のある呪文を修得した。

私はモノ凄く馬鹿 (ロイヤルストレートバカ) なので、
このくらい仕事が詰まってくると、
うっかりウットリしてしまいます。
ですから、妻に作品をボロクソに貶してもらいます。
図星な事をズケズケと言われるので、カチンときます。
しかし、怒りをグッとこらえ、その晩は、浴びる様にオレンジジュースを飲みます。
からすカァで夜が明けて、
昨日の罵倒された事を思い出し、涙目になったところで作品を観察し
ダメな所をひたすら直すという 『変態行為』 を続けるのです。
私の「冷静な目」とは「涙目」の事なのです。
昔、ある万引き主婦が、こんな良い事を言っていました。
「彫刻に独創はいらない。ただ生命がいる。」
続けて、
「辛抱せよ!インスピレーションを頼みにするな。
芸術家になるための資格は 知恵、思慮と誠意、そして意思だけだ。
正直な労働者のように ただ、お前の仕事をやり遂げよ。」
まあまあ出来てきました。

さらにネバって、
このくらい。

すごい時間がかかってしまいました。
こんな長い期間、一つの作品をやっていると、
自分の 「考え」 が制作中のモノを追い越して
遥か彼方へと進んでしまいます。
木彫はヨチヨチすすむので。
作品と自分の「考え」のギャプが凄いことになります。
そして、嫌になり仕方なく「完成」とするのです。


昔、通りがかりの万引き主婦がこんな良いことを言っていました。
「作品も進むが、作者のヴィジョンはさらに先へ進み、
作品と作者の開きはますます大きくなる。制作は決して終らない。
中断された失敗作のみが残る。完成された作品はできない。」




当ウェブサイトでの作品写真や、ふざけた屋号、くだらない冗長な文章でご想像がつくと思いますが、
私は長い間売れずにヒネくれてしまった、何処にでも居るようなおじさんです。
芸術大学を卒業し、彫刻しか出来ない輩を世間は何処も相手にはしてくれませんので仕方なく彫刻家に。
仏師の流れをくむ彫刻一家にたまたま生まれ、私自身は5代目の彫刻家です。
祖父と父は、家アトリエを建てたほど売れた人ですが、当代の私はご存知の通り見る影もありません。
この広い世の中には、私なんかよりも、何倍も上手で、綺麗で、見やすく、感じが良く、清潔感に溢れ、才能豊富で、
ふざけた事も言わず、素直で、作者の人柄もよく、容姿も端麗で、
芸術家らしいムードをキチンと備えている魅力的な彫刻家が沢山いると思います。
そんな中から、
産まれたばかりの娘を抱きながら、さだまさしの『雨宿り』を聴いて号泣する私のような地下芸人のブログを読んで頂き、
国立新美術館に足を運んで下さるのなら、それは奇跡だと思います。


私は会場に詰めていませんし、
貴重な時間と電車賃、入場料をつかわせて、この1点のみを見せられても
"怨み"しか生まないと思いますので、「ご高覧下されば幸いです」などと、
すっとぼけた事なんか口が裂けても言えませんがご高覧下さい。(深く深く頭を下げる。目に涙を浮かべながら。)


9月18日からは、かの有名なニキド・サンファル展も開催しております。
こちらを本命、私のしんこ細工は「武士の情け」として見て頂ければ、腹も立たないはずです。

どうかひとつ、よろしくお願いいたします。
今日も来てくれてありがとうございました。
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- 2015/09/15(火) 21:05:00|
- 展覧会
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