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シド工日記 (しどこうにっき)

仏師の流れをくむ彫刻一家にたまたま生まれ、私自身は5代目の彫刻家です。田島享央己(たじま たかおき)と申します。美術界の「フチ」にかろうじて手をかけている者ですので、どうかご存知のない方はこれを機会に覚えていただけると嬉しいです。

展覧会顛末記と新作彫刻のご紹介

 みみずです。

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みみずちゃんが出来ました。

前回のシド工日記でご紹介した

みみずちゃんのデッサンを元に立体化したのです。



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こういうモノを作ると妻が心配そうな顔をします。

売れないからです。




























ですから、こういうデッサンもすごく嫌がります。


















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怒られるのが嫌なので

見つからないように、隠れて描きます。


だけど、よく見つかります。



真面目にやっている時は、アトリエに来ないのに

「みみず」や「のり巻き」などをデッサンしだすと現れて小言です。




だけど僕は「みみずちゃん」を完成させました。




個展に出品して、

お客様に、「なにこれ気持ち悪い」かなんか言われてキャッキャキャッキャしようと思ったのです。



調子に乗ってヘビも作りました。



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「やだこれウンチみたい」かなんか言われてキャッキャキャッキャする予定でした。






そして、


「売れなかった(泣)」

「それみろ。ボケナスが。(怒)」

「すみません(反省)」



という一連の流れで、キャッキャキャッキャ楽しいシド工日記を書く予定でしたが

みみずちゃんもヘビちゃんも売れました。






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仕込んでいた、せっかくのネタも台無しです。




















人間、慌てた時、水が飲みたくなるって本当です。





「みみずちゃんください」と言われた時、僕は三杯飲みました。















みみずちゃんの件では、妻に虐げられてきたので

早く帰って「ざまぁみやがれ」と啖呵を切りたいと思いました。




帰りの電車の中で、色々と威勢のいいセリフを考えました。





考えましたが、

「ざまぁみやがれ」と

「こんちきしょうめ」しか思い浮かびません。



学校でもっと勉強していれば良かったなぁと思いました。



この二つの無限ループだと、必ず返り討ちに遭います。

啖呵を切るのは止めて普通に報告しました。








妻はすごく喜んでくれましたが、あまり驚きません。

僕が水三杯飲んだところでも、ちょこっと驚いたくらいです。

もう少し驚いて欲しかったけど、しかたありません。






















みみずちゃんは、ずっと僕の手元に居る奴だと思い込んでいたので

ちょっぴりさみしい気持ちです。


僕が八十幾つかの漠々のおじいちゃんになって、みみずちゃんを手のひらに乗せ

ホーレホレかなんか言ってお客様とキャッキャキャッキャするのではないかとボンヤリ考えていました。










































会期が終わって搬出。アトリエに戻ってきた時の写真です↓


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おかげ様でほとんど売れたので、これから梱包と発送の作業が待っています。



はじっこの方に「びっくりするコアラ」が写っています。


僕も気に入っていて、評判も上々だった奴です。












このコアラ、



題名変更します。

















































「まさか自分が売れ残って、こいつが売れるとは!とびっくりするコアラ」です↓




















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今回、僕の次に驚いてくれた、このコアラ。

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「タイトルを変えてやろうじゃないか」という慈悲深い方のご連絡をお待ちしております。



































































と、いうようなわけで個展が終了いたしました。

沢山の方に来ていただきました。本当にありがとうございます。




前回のシド工日記に、載せきれなかった作品をざっとご紹介します。








































マンドリル能面です。


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実際に被って遊べます。






ヤギのハンティングトロフィーです。

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壁にかけて飾ります。






カラフルふくろうちゃん。


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手をバタバタ動かせます。








びっくりするきょうりゅうです。


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肉食恐竜がチラッと見えて固まっている様子です。








木彫マリオネットのはちくんです。


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アルパカと。

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ハシビロコウの上に乗って。

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オムライスの身代わりになるイモムシくん。


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イモムシくんが、食べられちゃいそうなオムライスを助けたわけです。

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組彫刻ですから、色々な飾り方が出来ます。
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オムライスくん

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襟足が長めです。

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後ろ姿。

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はちくんと。


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金太郎と熊。




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ちょっと不良の金太郎と熊です。

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キャベツちゃん。

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発作的にキャベツなぞを彫ってしまいました。



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くらげちゃん。

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この二人は、個展終了後、飯田橋のパペットハウスさんのところに居ます。

お近くにお越しの際はちょっとのぞいてみてください。

「シド江ちゃん」と「はちくん」



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次に、会場の様子を。





入って正面です。

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奥から入口です。

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等身大の猫です。

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等身大の女性像。

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まった倶楽部というタイトルです。デッカイ将棋なんです。

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オランウータンの赤ちゃんとハト。

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白クマ。


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動物たち。


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奥の陳列風景。

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みみずちゃんに負けて放心状態かつヤケクソなコアラ。































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ロボットちゃんも展示しました。


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気持ち悪い二匹をしたがえて、びっくりするパンダ。


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等身大の女性像。


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ご存じ、ちくわ一門。

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くらげちゃんときょうりゅう。

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ひっくりかえる猫。

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このカニが、びっくりするくらい魅力が無くてお気に入りなんです。なんで作ったのかわかりません。













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今はアトリエにあるのですが、笑っちゃうくらい魅力がない。かなりの問題作です。

今度、改造して可愛くなるかの実験をします。






















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この時はまだ普通の「びっくりするコアラ」


自信に満ち溢れています。







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会期終了後。

残った作品のうち、これらをギャラリーの常設展示として置いてきました。


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気になる子がいたらギャラリーの方に声をかけて頂ければ、出してもらえるはずです。




























会場の様子を動画で撮影しましたのでご覧ください↓















































そんなこんなで

展示会は無事終わりまして、



会期中、ご注文いただいたモノをバンバン彫っていきます。














チェーンソーで木取りしたり、

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木工機械を使って楠を製材します。


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そして、出来たのが

ハシビロコウのバッグチャーム。



















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お地蔵ちゃんとデビルくんとおかっぱチョビひげサンタ。


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サンタは僕の家用です。

「クリスマスっけが無いからこしらえろや」と言われたので急いで作りました。


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新しい千代鶴是秀ちゃん(鑿の作品)も作りました。


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玄翁と彫刻鑿のイヤリングも作りました。


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白檀という超高級木材を使用しています。

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後ろは、砥石ちゃんと初代千代鶴是秀ちゃん。

新しい千代鶴是秀ちゃんは、刃が減ってません。

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それから、ちょっくら息抜きにマリオネットを作りました。






















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構造などを実験したくて試作しました。

だから名前は、試作ちゃん。



良く動きます。↓


























































このように毎日楽しく仕事しておりますと、凄い幸せなのですが、

自宅で万引きしているようなもので、スリルがありません。





なぜだか、変なモノをコソコソ作りたくってたまらなくなるのです。

以前は年がら年中コソコソしていて、スリルがありすぎてたまらなくなっちゃってましたが…。






しかし、

僕は冷静に自己分析をします。

こういうところが僕の恐ろしいところです。学校でてます。自動車学校もでてます。
















妻に脅かされながら作るのが長くて、そういう性質になってしまったのではないかという結論を二分で出し、

さっそく僕の渾身のデッサンを、妻の目につく所に置いておきました。







今、作ろうと思っている彫刻のデッサンです↓








































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罵倒されました。

やっぱり褒められて暮らしたいと思いました。


みみずちゃんが売れたのは「たまたま」です。



酔狂者のお客様がご祝儀がわりに買ってくれたんやで!と、言われました。















目が覚めました。


完全に天狗になっていました。




































エビフライのデッサンと

もう一枚、置いておいたデッサンがあります。

これは、ふざけるんじゃないと言いながらクシャクシャにされたのを

丁寧に伸ばしたので、ちょっと見にくいです↓



















































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落書きのように見えるかもしれないけど深いんだよ深いんだよ。

と、

いくら説明しても可哀想な子を見るような眼で僕を見ます。













調子に乗って、デッサンを目のつく所に置いてしまって凄く後悔しました。

馬鹿にされるのはスリルがありすぎます。

































僕は、馬鹿にされて悔しいので

後日、妻をアトリエに呼んでデッサンについての講義をしました。
































「作例として、金属のポットをモチーフにしますから、よく見てなさい」


と、言いました。





















「おい先生早くすませや」と言われましたが無視しました。





まず、大まかな形を単純化してざっくりアタリをつけます。


妻は二分で立ち去りましたが無視しました。

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この大まかさが重要です。








そしてキチンと描き込みます。




















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きっちりポットを勉強しました。


しかし、これでは面白くありません。



これを踏まえて、

紙を新しいのに変えてもう一度ポットを描きました。



















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ぜんぜん良くなっています。










このように、造形的真の世界に突入すると、そこに描き出された描線は

一見、視覚的現実世界とは何の関係もないように見えてきます。


しかし、それは、三次元的視覚の世界からの脱却して、より高次元な真実を追求する必然的結果なのです。




























































これは、僕の最近もっとも怒られた高次元な真実を追求したデッサンです。↓






































































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たいしたことない駄作ですが、

「機関車 6両」の、

「6両」の部分になんだか腹が立ったみたいです。

















































































4両編成にすればよかった。







































































今日も来てくれてありがとうございました。

















































最後に、

今年一年、シド工日記を読んで頂いてありがとうございました。

来年もまた、よろしくお願いいたします。
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  1. 2012/12/28(金) 20:39:10|
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