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シド工日記 (しどこうにっき)

仏師の流れをくむ彫刻一家にたまたま生まれ、私自身は5代目の彫刻家です。田島享央己(たじま たかおき)と申します。美術界の「フチ」にかろうじて手をかけている者ですので、どうかご存知のない方はこれを機会に覚えていただけると嬉しいです。

デッサンから彫刻が出来るまで

 僕は、苦労してこの一枚のデッサンを描きました。
























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この人の肖像を頼まれたからです。↓


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この人は、昔、インドで按摩さんをなさっていた偉い方だそうです。


今に伝わるタイ古式マッサージの家元なんです。












『タイマッサージの創始者は、今から約2500年前の時代を

お釈迦さんと共に生きていた インド人のシヴァカ・ゴーマラバット師とされているそうです。

彼は お釈迦さんの主治医であり、当時サンガ(仏教僧の集団)の筆頭医師として活躍していました。

彼の伝説は、現存する様々な仏教文献に残されています。』









この、インドの按摩の親方の肖像を注文していただいた方は、

東京、中目黒でサルビア・サルワーレというタイ古式マッサージのお店をやっている方です。


店内風景↓

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タイ古式マッサージをお客さんに施術するお部屋に飾って頂けるそうです。

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そんなこんなで、冒頭に出てきた

このデッサンを描いたわけです。

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しかし、僕は

どうしても『手』の動きとフォルムに納得が出来ません。

どうも気に入らない。 モヤモヤします。


























あとは、完璧です。

足といい、顔といい、全体の雰囲気といい、非の打ち所がありません。
























そこで僕は、『手』の部分だけ、

何べんも何べんも、描いて試行錯誤をするのです。




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ただ一つの真実の線を見つけるために、全神経を集中させます。

自分が線を描くのか、線が自分を描くのか、という造形の極地であり

『色不異空、空不異色』という禅的な境地でもあります。














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途中で、我を忘れて『ピース』の練習をしてしまいました。





























こんな話があります。















昔、高名のお相撲さんが連勝の記念に、これまた高名の画家に絵を一枚描いて欲しいと頼んだそうです。


画家は引き受けたが、いつまでたっても絵が出来てこないので、しびれを切らし


何度も催促して、やっと出来てきたものを見たところ



大きな画面に、弓が一張り描いてあるだけだったそうです。



お相撲さんのガッカリとした表情を見て、画家はアトリエにお相撲さんを案内する。



すると、そこにはうずたかくつまれた弓の習作がある。



画家は、ピンと張った弓の糸を表現する一本の直線を引くために、


何年もかけて無数の習作をなさねばならなかったのです。


それを見てお相撲さんは感激し、その一張りの弓の絵をおしいただいて帰ったという話があります。































































































これは是非、僕もやってみたい。



















ですから、こうやって『手』の習作をかさねているのですが、


いつまでたっても依頼主が殴りこんでこないので困っています。






































『手』の造形について色々考えて描いているうちに

わけが分からなくなってきます。


彫刻の『手』のポーズさえ考え直さなければいけない気がしてきました。



















これはもう、



いっかいチャラにして、色々なポーズで『手』をバッチリ描いて研究しなければダメです。



































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『手』を描いてみて、僕は何かを掴んだ気がしました。



















そこでまた、インドの按摩さんの全身像をデッサンしてみます。


















































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完璧です。

























習作を重ねたお陰で、手の表情がビシッと全体と調和しています。













すごい完璧です。








































やっと、木にデッサンができましたが、

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『依頼主の殴りこみからの習作見せ&感動』はおじゃんになってしまいました。















ノコを入れて、余分なところを落としていきます。

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さらに、チェーンソーやノミで大まかに落としていきます。

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「あんたこれインドの偉い人でしょ?」と妻は心配していましたが、

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昔の人だから、もう身寄り頼りも居ないし苦情の心配はありません。





































ノミでさらに彫っていきます。形が出てきました。

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細かい部分も彫りつつ、形を滑らかにしていきます。
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だいぶ出来上がってきました。
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目に穴を開けておいて、彫りは終了です。
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以前彫ったコウモリちゃんの注文を受けていたので、そちらも彫りが終了です。

オリジナルのコウモリちゃんについてのブログ記事です。↓
                            コウモリちゃん


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タイ古式マッサージくんに着色していきます。





最初はベースに白を薄く塗ります。
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ブルーをかけて。
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着物に黒を塗ります。
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ちょっと赤みをかけて。
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着物に金を塗ります。
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黄色を薄くかけて。
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着物を赤くします。
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肌色を整えて。

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さらに色彩に変化をつけていきます。

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さらにさらに深みが出るように、色を重ねます。
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写真では分かりにくいですが、もっともっと複雑な色にします。
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これくらいになったら終了です。


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あとは目を入れて、鑿跡を際立たせる細工をして、完成です。↓



























































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内股のコウモリちゃんも完成です。

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この着色も、色んなことをやっています。
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コウモリちゃんの見所は後姿です。
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サインはお尻に入ってます。
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コウモリちゃんは、僕にしては珍く人気の作品です。
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3万円で作ってますので、宜しくお願い致します。
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ちくわ一門との記念撮影。
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さて、


デッサンで習作を重ねたかいがありまして

お釈迦さんの主治医、インドの按摩ちゃんが出来上がりました。



























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この手の生き生きした感じは、アトリエにうず高くつまれた習作のたまものです。

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「インドのお偉いさんをこんな風につくって大丈かい。あんた。」と、妻がまた言いました。

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「タイ古式マッサージ協会に怒られるで。あんた。」
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「タイの人は気が荒いで。あんた。」
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「タイの大使館の庭にデカイ松の木があるんや。そこに縛り付けられるで。あんた。」
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「そんで、夜中になると、アリかなんかに喰われてワァーッってなるで。あんた。」
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僕は、だんだん怖くなってしまいました。


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しかし、アトリエにうず高くつまれた習作を見れば、大使館の人も納得するはずです。

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つまり、僕の憧れ『はりつけからの習作見せ&感動』です。













































しかし、どうでしょう。なかなかインド人のお偉いさんらしく出来ました。哲学的ですらあります。

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僕もたいへん気に入っています。
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東京の中目黒にある、『サルビアサルワーレ』というタイ古式マッサージのお店に

この子は立っています。見に行きがてらマッサージを受けてみてはいかがでしょうか?


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サインは下に入れました。ちなみに女性限定のお店だそうです。

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そして、もう一つ作品完成しました。




びっくりする猫です。↓






































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ジャンプしてるイメージです。
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尻尾をつかって三点で自立しています。
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気弱な後姿。
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色は上手く塗れました。熱帯魚にこんなのいたなぁ。
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弓状のアウトラインが美しくできたと思います。
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僕の家の猫をビックリさせて観察すると、意外と、猫は無表情にビックリします。
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そこがまた可愛いのですが。
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しかし、ちょっぴりおびえの表情も忍ばせなければいけません。
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猫は気位が高いのでビビッてる顔は見せたくないのです。
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気品のあるビビリを目指しました。
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サインは足の裏に入っています。
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この作品も僕のお気に入りです。
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この猫の表情と言うのは、

入梅時に共同便所へ裸足で入って行って、

出たとたんに金貸しに会ったような心持の時にする表情とでも言いましょうか。


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非常に微妙なものです。
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そして、もう一つ。新作です。























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感じの悪いハトです。










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ちょっと上目遣いのハトです。
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発作的に夢中で作りました。
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学生の時、沢山、粘土でハトを作りました。
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芸大の試験に出るからです。
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鳥というのは、飛びますからフォルムに一切の無駄が無いのです。
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ですから、べらぼうに美しいですし、めちゃくちゃ難しいです。ごまかしがききません。
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でも、まぁ、普通に作ってもなんですから不良のハトにしました。
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学生の時、受験のために作っていたハトより、こっちのほうが楽しかったです。
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ハトはやっぱり可愛いです。
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大きさは、本物のハトと一緒くらいです。










































猫とハト。





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「横になれ。」「はい。」
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「ええ眺めや。」
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このコンビもなかなか良いようです。

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最後に、




ご存知、ちくわ一門との記念撮影です。









































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おたまじゃくし君と相性バッチリではないでしょうか。
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ハトと猫。完全にハトが上位です。
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すごい集まりです。

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「えへへへ。いいでしょ。」
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「しーん。」
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「あれっ!!」
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「えへへへ。」「うふふふ。」
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「うふふふ。」「えへへへ。」
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「うふふふ。」「えへへへ。」
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今日も来てくれてありがとうございました。









































































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  1. 2012/02/07(火) 08:57:11|
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