よちよち制作していた『動く彫刻』、
木彫のマリオネットがついに完成しました。
前回は、こんな感じで終わりました。↓

頭と胴体の彫りがほぼ終わって、
あとは、手足をみっちり仕上げたらオッケーというところまででした。
では、
手足の彫り、着色から完成へと沢山の写真とともに
制作工程をみていくことにしましょう。

女の子の手を彫っているところです。
荒彫りのザックリとした段階から、もっと細かい面を出していきます。
こんな感じまで彫ります。

続いて、足を仕上げていきます。

こんな感じです。

彫りあがったので、仮組みしてみます。



まぁ、だいたい、いいかなぁ~と思います。
次は、大男の手足です。

話は変わりますが、
この工程あたりで僕は新しい彫刻刀を手に入れました。

ちょっくら、さしさわりがあるといけませんので、場所は伏せますが、
東京の三軒なんとか屋にある、土田なんとか店さんという刃モノのお店で買った
『清忠』(きよただ)の印刀です。
『清忠』の刃モノは、もう手に入らない貴重なものです。(廃業してしまわれたのです。)
研いで彫ってみたら、それはもう、素晴らしい使いごごちで、ビックリしてしまいました。

この『清忠』を使って、大男の手足を彫ったところです。

こんな感じで仕上がりです。

これで、すべてのパーツが完成しました。
6月から作りはじめて、やっとこさ仕上がりました。
仮組みして、記念撮影です。

これが↓

こうなるわけです↓

ただ単に、ノミや彫刻刀で彫っていっただけですが、自分でも不思議に思います。
僕の単純な思い込みでしょうが、作業していくうちに、
「あっ、今、魂のった。」
と、いう瞬間があるのです。
でも、それは、なかなか最後までのっていてくれないもので、
捕まえておくことが出来ません。
油断するとスルリと簡単に抜けていってしまうように感じます。
この作品は、ガッシリ捕まえられたかなぁーと、
少し、内緒で、自惚れます。
次に、この彫刻を動かすためのコントローラーを作ります。

旋盤で削り出して丸くした部分が握りです。
板を四角く切って、差し込みます。

3ミリの鉄棒を曲げて、先端に差し込みます。
ここに、手の糸が通るわけです。

コントローラーが出来たので、
いよいよ、本体の着色をしていきます。
まず、全体に、薄く、白を塗ります。

その上から、青を重ねます。

静脈の位置に塗るのがポイントです。


こんどは、肌色を薄く重ねていきます。

大男の方は、人間に近い肌色に。
女の子の方は、青みがかった肌にしようと思います。

異形の大男が、実をいうと普通で、女の子がちょっと異質な風貌にしたかったのです。
僕が以前作った、『ハシビロコウくん』です。↓

この、ハシビロコウくんの肌の色に近くしようと思います。
女の子は、ハシビロコウくんの妹だったという設定です。
異形の兄を持つ、女の子はやっぱり異形の男に恋をしてしまったのです。
血が騒ぐのでしょう。よくわかります。
僕の家も、
よせばいいのに、彫刻家が5代続いてしまっています。
グッと青くする前に、両方に赤みをつけておきます。

その赤みの上から、青を重ねます。

大男は、黄色を重ねます。

二人の差がハッキリしてきました。

眼球を白く塗り、細部にいろんな色を足していき、
深みを出していきます。

少しづつですが、変化していきます。

お化粧をほどこす感じで、仕上げていきます。

だいぶ、深みとリアリティーが出て来ました。
いよいよ、瞳を描き入れることにします。

この作業は、すごく緊張します。
瞳を描くと、急に人格が宿る気がするからです。

女の子は、ちょっと人間離れした感じにしました。

大男は、人がよさそうな感じになるようにしました。

これで、着色の仕事は終わりです。
最後に、ノミ跡のエッジを、際立たせるため
少し色をのせます。

これでより一層、形が見えやすくなると思います。

唇のテラテラ感を出すために、
クリアーのラッカーを塗ります。

眼球の濡れた感じも、液体ガラスを塗って表現します。

瞳を描いて、目の玉を光らせる作業が終わると、
いつも、なんだかさみしくなります。
この時から、この二人の生命のスイッチが入って
もう僕のモノじゃなくなる気がするからです。
生みの親である僕を置いて、トコトコよそに遊びに行ってしまう感じと言うか…。

全体を、蜜蝋で磨いて、ツヤを出します。

適度なツヤ感が、肌の油を感じさせてくれます。
その下に、血が流れているように思えれば、成功です。

いよいよ、組み立てです。
木の丸棒を、関節に差し込んでいきます。

修理の事を考えて、接着はせず
手で着脱可能です。


これで、関節はつながりました。
あとは、鉄棒を頭部に差し込んで、コントローラーを付けて
手足に糸を張り、完成です。
アトリエに立たせた姿を
モノクロで撮影してみました。
しばらくご覧ください。↓











光がキレイだったのと、なぜか表が静かな日でしたので
とても幻想的な雰囲気のアトリエでした。
僕は、長い間、ジーッと二人を眺めていました。
そろそろ、キチンと撮影するために、二階の「シドロモドロ撮影所」に移動です。

撮影所といっても、ただの部屋ですが。
ここからは、カラーで撮影です。

二人の名前を、決めなければいけません。

彫刻のタイトルはいつも困ります。

僕はいつも、たいがい「~くん」にしちゃいます。

なんかもっと文学的なカッコイイタイトルをつけて脅しをかければよいものを、
いつも「~くん」か、いいとこ「~ちゃん」です。

「おちんちんくん」はどうでしょう?
妻は「よしっ。それでいこう!」
と、元気ハツラツに言いましたが、やっぱり止めておきます。

足の先がちょっぴり上がってますが、
これは歩かせる時に、この方がスムーズになるからです。

今回、おちんちんと手が、とても良く彫れて気に入っています。

ひざの裏はこうなっています。

そうそう、名前を決めなきゃいけません。

僕は、めんどくさいから、大男と女の子でいいと思いましたが、

一応、妻に相談してみました。

「おちんちんくん以外でなんかないかね?」と聞きました。

たぶん「おちんちんくん」を却下されたのが、気にくわなかったのでしょう。

「タッキー&翼」「のいる・こいる」「ヒデとロザンナ」など適当なことばかり言います。

ですから、もうあきらめまして、

『女の子』と『大男』にします。

シンプルが一番です。

「ビビっておちんちんくんと名付けられない腰ぬけ」と妻に罵倒されてもいいんです。
作品が良ければいいんです。

女の子の顔は、憂いのあるイイ表情に彫れました。

妻は、ちょっと僕に似ていると言います。

大男の顔は、少し苦労しましたが、その分魅力的な異形顔になったと思います。

優しそうで、間抜けで。気に入っています。

座らせてみました。

ちょっと、ワイルドに。

なかなかの男前です。








立ちポーズもさまになってます。

だんだんハンサムに見えてきました。

この大男を材木から木取りした時、
余った材料で作った作品があります。
ですから、大男と同じ木から生まれた兄弟です。

それが、こちら。
『さやいもむしくん』です。
兄弟の記念撮影。

兄弟初顔合わせです。

いもむしくんも大男も嬉しそうです。

ところで、この落差を見てください。
これでは信用されないわけです。

こうなってくると、うちの「ちくわ一門」とも記念撮影がしたくなってきます。
まず、「ちくわ」と「おたまじゃくしくん」を乗せてみました。

なにかの罰ゲームみたいです。
一門全員、乗ってもらいました

「ちくわ一門」は、楽しそうですが、
大男は、こころなしか涙目です。

芸人のツライところです。









一仕事終えた後の男の背中です。




「もうこんな仕事させないでください。」と言っているみたいです。

女の子は、異形の者『ハシビロコウくん』の妹ですから
ずいぶん人生苦労したはずです。

悩み多き女の子の雰囲気が出せたと思います。



















さて、
大男もやった仕事ですから、キチンとやってもらいます。



これ、泣いてませんか?












「助けて!」

「変な男にヘンなもの持たされるの!」

「し~ん…」

「えっ!?」

「なんなの!こいつ!?」

「なんなのよ~~っ!!!」

「どうしたんだい?」

「まぁまぁ、ええやないか。」

「そうね。」

「あいつは気持ち悪いけど、僕らを作ってくれた人だよ。」

「いつも脅かされていて可哀想なヤツなんだよ。」

「ちくわを頭にのせるくらいは我慢しようや。」

「そうね。」

「あたし、あやまってくる。」

「ぼくも一緒にいってあげるよ。」

「ゆるしてくれるかな。」

「やっぱり行くのやめようかな。」

「じゃ、やめようか。」

「こらーー!!」

「空手チョップよ!」

「ちょっとあんた。」

「なんでそんなんゆうた。」

「行かんでいいかなと思って。」

「そうね。」

「あたしちょっと野暮用思い出した。」

「えっ?そんなのいいでしょ。」

「そうね。」

「やっぱりあやまりに行こうよ。」

「やめたん違うんかい!!」

「あんなアホにあやまること無いで!」

「違う。それは違う。」

「違うことあらへん!」

「いや、そうじゃないんだ。」

「人間、スジっちゅうもんがあるだろ。」

「わかるね。」

「し~ん…」

「えっ!?」

「えっ!??無視?」

「ええっー!?」

「…わかったわ。」

「そうかい、ありがとう。」

「さあ、もういっぺん、ちくわ乗せにいくわよ。」

「はぁ~、またやるのかぁ。」

「それがあたしたちの生きる道よ。」











最後に、二人に踊ってもらいました。
ご覧ください。

今日も来てくれてありがとうございました。
- 2011/10/12(水) 16:25:30|
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