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シド工日記 (しどこうにっき)

仏師の流れをくむ彫刻一家にたまたま生まれ、私自身は5代目の彫刻家です。田島享央己(たじま たかおき)と申します。美術界の「フチ」にかろうじて手をかけている者ですので、どうかご存知のない方はこれを機会に覚えていただけると嬉しいです。

いろいろな話をしていきます。



 先日、ビールのおつまみに、カマボコを食べた時の事です。



妻が切って出してくれたのは良いのですが、


当然このように、板が残ります。


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骨の髄までしみ込んだ貧乏気質ですから

このカマボコの板を見ると、もったいなくて捨てれません。

ゴミ箱の前で「なにかに使えないかしら。」

と、何時もモジモジしてしまいます。








「あんたの墓にすればいいじゃない。」





と、マジック片手に満面の笑顔で駆け寄ってきた妻を邪険にするわけにはいきません。




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「俺が参っちまった時はな。どっかの空き地の金魚のお墓の隣りに埋めといてくれ」

と、付け加えてマジックを静かに置きました。

















お墓問題が片付いたところで、東京マラソンを走ってきました。




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5時間13分でゴールしました。




















最近読んだ本の中で、おススメ。








滅茶苦茶な豪傑さん。若山と勝新の兄弟


この二人の子分、山城新伍の回想記。




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僕は豪傑さんに強く憧れるのですが、毎日せこせこ走ったり、お墓はカマボコですし

まったく豪傑IQが低いのが悩みです。














57歳で第一子、60歳で第二子、63歳で第三子を授かった、

ドラマ「北の国から」の演出家の杉田成道の本です。




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久しぶりに号泣してしまいました。







昭和の大名人、六代目三遊亭円生の本です。 これもめちゃくちゃ面白かったです。

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円生師匠の言葉で、僕がいつも肝に銘じているものがあります。










弟子が、円生師匠にこう聞いたそうです。


「師匠!初めてその噺を覚えたネタ下ろしの時はそこそこウケルのですが、ところが二度目にやるとどう言う訳  か、しらけるコトが多いのはどう言う訳でしょう?」

「そりゃあ当り前だ、いいか!芸と言うものは砂の山だ」

「砂の山?」

「砂山を登ると崩れてズルズルと滑べる。それが芸でげす。良いか芸てえものは、なにもしないとドンドン下がる もんだ。毎日少しずつ下がってる。だから最初にやった時は、一生懸命覚えて必死にやるから受ける。ところが それからなにもしないと芸が下がる。下手になるから受けないんだ」

「はあ、なるほどではどうしたら受けるようになるんでしょう?」

「良いか。芸人はすぐ勘違いをする。おれは稽古をしてるから芸が上達してるだろう。ところが砂山ではいつもズ ルズル下がっているから。少しぐらい稽古したんじゃあ。滑った分だけ上がる。つまり同じとこを行ったり来た りするだけだ。つまり自分じゃ上手くなってるつもりでもちっとも上達してない。だから上達しようと思ったら 崩れる以上にいつも稽古をしないと上には登れない。それが芸でげす」































話はかわって、









僕が普段使っている道具は、ほとんど祖父か、父があつらえたモノです。

どっさりあるので自分で買った事もありません。



どうして彫刻家になったのですか?と聞かれたら、



「道具がいっぱいあってもったいないと思ったから。」


と答えるくらいです。



特に、祖父の道具は高価なモノが多く、第一級の鍛冶屋に作らせたノミばかりです。

めちゃくちゃ切れます。ずーと切れる刃ばかりです。


しかし、鼻ったれ小僧の時分から、当たり前の様に家に転がっていたモノなので

僕はわりあい道具には無頓着です。(もちろん大事にしていますが)

もうバンバン使っています。







そんな道具の中に、

明らかに他とは違う切れ味の道具が、何本かあります。




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木にささっていく時の感触が「ぬぅ~」っとしてると言うか…、いや、違う。



「すねぃぃ~」っとしてると言うか…、いや、








「ぺょぉぬぉ~」ってしています。


















いや、やっぱり「ぬぅ~」です。





「ぬぅ~」っと入っていってポンって切れます。


で、切れた後の木が『ビカッ』と光るのです。




こんな調子ですから、当然お気に入りで

研いでは使い、使えば研いでの大活躍です。





「…でも、これなんだろう、銘は梵字一文字だし。」




と思って居りましたが、帰来の道具無頓着気質ですから、




「ま、いいか。テヘっ。」



と、末っ子坊っちゃん気質丸出しの了見で、調べも聞きもせず。










先日、敬愛する超絶技巧博覧強記刃物博士彫刻家の岩野亮介さんのアトリエに遊びに行った時のことです。

(このブログのリンクから岩野さんのページにいけますので是非ご覧ください)




     
「梵字一文字の銘が入ったノミがあるのですが…。なんですかねぇ。」






と、何の気なしにボンヤリ聞いてみたら、



     



「千代鶴是秀じゃない!?」




と、驚いた御様子をした瞬間、きびすを返してアトリエから出て二階に駆け上がって行き、

またすぐ駆け下りてきました。





「千代鶴是秀」の本をもってきてくれたのです。



僕は驚いてしまうやら、恐縮してしまうやらでドギマギしています。



とにかくスゴイ刃物だそうです。






『 千代鶴是秀 (本名 加藤 廣) 1874~1957

米沢藩代々の刀匠の家系を受ける、七代加藤長運斎綱俊の孫。

綱俊の後を叔父の石堂運寿斎是一が継ぎ、その後是秀が継いだ。

明治・大正・昭和にかけての不世出の名工。

昭和32年、東京中目黒で84歳で亡くなる。』















あぁ、これは大変なことをしてしまった…!。

不世出の名工がこしらえた道具で、ちくわやいもむし君をこしらえてしまった…!。


もう使うの止めて、大事に保管しなきゃいけない…。















しかし、祖父、父、がドシドシ使ってちびてしまった

『千代鶴是秀』をまじまじ見てみると、使わなきゃ駄目だなぁと思います。








これが、ちびて無くなるくらい仕事しなきゃ

祖父と父に申し訳がたたないのでは、と考えるようになったのです。

























話はかわりまして、





先日、

ヨーグルトが食べたいので、奥さんに頼んだら



「バナナヨーグルトにしてあげる。」との優しいお言葉。











出てきたのが、これ。



























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美味しかったです。






今日も来てくれてありがとうございます。

  1. 2011/03/07(月) 13:54:20|
  2. よもやま噺
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